頑張れない、には理由がある

「やらなきゃいけないことがあるのに、気持ちばかり焦ってしまう」

「考えすぎて疲れてしまう。休みたいのに、頭が休まらない」

そんなことはありませんか?

身体は疲れているのに、気持ちは落ち着かない。頑張りたい気持ちはあるのに、思うように動けない。

そんな状態が続くと、「もっと頑張らなきゃ」「どうして私はこんなに疲れやすいんだろう」と、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。

東洋医学では、同じように見える不調でも、その背景にある身体の状態は一人ひとり違うと考えます。

今回は、焦りや落ち着かなさに関係することがある「陰虚火旺(いんきょかおう)」と、考えすぎや疲労感などに関係することがある「心脾両虚(しんぴりょうきょ)」についてご紹介します。

東洋医学では、心と身体を一緒に考えます

東洋医学では、気・血・津液(き・けつ・しんえき)などの状態や、五臓の働きに注目しながら、身体全体を捉えていきます。

ここでいう「心」や「肝」「脾」などは、西洋医学でいう臓器そのものと完全に同じ意味ではありません。身体の働きや心身の状態を理解するための、東洋医学独自の考え方です。

そのため、気持ちの焦りや不安、疲れやすさなども、ほかの身体の症状と合わせて考えていきます。

① 焦る気持ちが止まらない「陰虚火旺」

陰虚火旺(いんきょかおう)は、東洋医学における弁証のひとつです。

「陰」は、身体を潤し、熱を冷ます働きに関係するもの。「火」は、ここでは身体に現れる熱の状態を表しています。

陰が不足すると、相対的に熱が強くなった状態になることがあり、これを陰虚火旺と考えます。

こんな症状がみられることがあります

  • 気持ちが焦り、落ち着かない
  • イライラしやすい
  • 寝つきが悪い、眠りが浅い
  • 手のひらや足の裏がほてる
  • 寝汗をかく
  • 口や喉が乾きやすい

ただし、これらの症状がすべて現れるわけではありません。また、焦りや不眠だけで陰虚火旺と判断することもできません。

東洋医学では、どこに注目する?

陰虚火旺を考えるときは、焦燥感だけでなく、身体の潤いが不足していることを示すサインや、熱の症状があるかどうかも確認します。

例えば、舌が赤い、舌苔が少ない、寝汗がある、手足がほてるといった所見は、弁証を考えるうえで参考になります。

舌や脈の状態、睡眠、口の乾燥、疲労感なども含めて、身体全体をみていくことが大切です。

日常生活で意識したいこと

気持ちが焦っているときほど、無理に気持ちを切り替えようとしたり、さらに頑張ろうとしたりすることがあるかもしれません。

そんなときは、いったん手を止めて、ゆっくり息を吐いてみる。寝る前はスマートフォンから離れる時間をつくるなど、心身を休めるための時間を意識してみましょう。

また、睡眠不足が続いていないか、休息が十分に取れているかを振り返ることも大切です。

ほてりや寝汗、不眠などが続く場合は、別の原因が関係していることもあります。無理に体質のせいと考えず、必要に応じて医療機関に相談しましょう。

② 考えすぎて疲れてしまう「心脾両虚」

心脾両虚(しんぴりょうきょ)も、東洋医学における弁証のひとつです。

東洋医学では、「心」は精神活動や血の働きに、「脾」は飲食物から気血を生み出し、運ぶ働きなどに関係すると考えます。

心脾両虚は、心と脾に関係する気血が不足した状態を捉えるものです。

考えごとが多い状態が続いたり、疲労が重なったりすると、心身の不調が現れることがあります。東洋医学では、そのような状態を考える際に心脾両虚が候補になることがあります。

こんな症状がみられることがあります

  • 考えごとが多く、頭が休まらない
  • 疲れやすく、気力がわきにくい
  • 物忘れや集中力の低下が気になる
  • 眠りが浅い、夢をよく見る
  • 動悸がする
  • 食欲が落ちる、食後に疲れやすい
  • 顔色が淡白に見える

心脾両虚では、精神面の症状だけでなく、疲労感や食欲など、身体のエネルギーや気血の不足を示す所見が重なっているかを確認します。

東洋医学では、どこに注目する?

心脾両虚を考えるときは、考えすぎることだけでなく、疲れやすさ、食欲、睡眠、動悸、物忘れなどの症状を合わせてみていきます。

舌が淡白である、脈が細く弱いなどの所見も参考になります。

気持ちの不調が目立っていても、身体には気血の不足を示すサインが現れていることがあります。

一方で、疲れやすい、眠れないという症状は、さまざまな原因で起こります。症状の一部だけで心脾両虚と決めつけず、ほかの弁証も含めて考えることが大切です。

日常生活で意識したいこと

考えごとが多いと、頭の中で何度も同じことを繰り返し考えてしまうことがあります。

そんなときは、気になっていることを紙に書き出してみるのもひとつの方法です。

すべてを一度に解決しようとせず、今できることをひとつだけ選んでみましょう。

また、食事を抜かず、無理のない範囲で規則的に食べることや、睡眠と休息の時間を確保することも大切です。

疲れているときは、休むことも身体を整えるために必要な時間です。

陰虚火旺と心脾両虚、どう違う?

どちらも不眠や精神的な落ち着かなさなどが現れることがありますが、東洋医学では、身体の状態を示す特徴を確認しながら区別していきます。

比較するポイント陰虚火旺心脾両虚
主な病機陰液の不足と相対的な熱の亢進心と脾に関係する気血の不足
気持ちの状態焦燥感、落ち着かなさ考えすぎ、不安感、集中力の低下
身体のサインほてり、寝汗、口や喉の乾燥など疲労感、食欲不振、動悸、物忘れなど
舌の所見の例舌質紅、少苔・無苔など舌質淡白など

これはあくまで代表的な特徴の比較です。実際には症状が重なることもあり、陰虚火旺と心脾両虚のどちらか一方だけで説明できるとは限りません。

また、焦りや不安、疲労感には、ストレスや睡眠不足、ホルモンの変化、身体の病気など、さまざまな要因が関係します。

東洋医学の弁証は、症状をひとつ見て決めるのではなく、身体全体の状態を総合的に判断するためのものです。

頑張れないときこそ、自分を責めないで

頑張りたい気持ちはあるのに、思うように動けない。

休みたいのに、気持ちばかり焦ってしまう。

考えすぎて疲れてしまい、何もできなかった自分を責めてしまう。

そんなとき、必要なのは、もっと頑張ることだけではないのかもしれません。

今の自分の身体がどんな状態なのか、少し立ち止まって考えてみることも大切です。

東洋医学では、同じ症状でも、その背景にある身体の状態によって、考え方や施術の方向性が変わります。

鍼灸こえりでは、お一人おひとりのお話を伺いながら、症状だけでなく、睡眠や疲労感、日常生活の様子なども大切にし、身体全体の状態をみて施術を行っています。

「こんなことで相談してもいいのかな」

「うまく説明できないけれど、なんとなくしんどい」

そんなお悩みでも、ひとりで抱え込まずにご相談ください。

身体が少し軽くなることで、日常の過ごし方が変わっていく。

頑張りたいのに頑張れないときも、自分を責めずにいられるように。

鍼灸こえりが、安心して力を抜ける場所のひとつになれたらうれしいです。


※この記事は東洋医学の考え方を紹介するもので、医学的な診断を行うものではありません。症状が長く続く場合、日常生活に支障がある場合、強い動悸や著しい疲労などがある場合は、医療機関への相談もご検討ください。